先回の「Windowsムービーメーカーの使い方」(2009年05月07日)で、DVD映像の再編集についての質問をたくさん貰いました。一般のDVDビデオの編集ソフトでは、DVDディスクから映像を直接読み込み編集できるものが多いようです。ただ、このWindowsムービーメーカーではDVDディスクからの直接読み込みができませんので、読み込み可能なファイル形式に変換する必要があります。
今回は、一般にはなじみの薄いDVD映像のファイル形式の詳細と、他形式への変換方法をみていくことにします。ただし、市販あるいは貸し出し用のDVDビデオや、地デジ放送を録画したDVD映像にはコピープロテクトがかかっていますので、自由な編集やダビングはできません。ここではプロテクトのない映像についての話になります。
<Windowsムービーメーカーで扱えるファイル形式>
最初にWindowsムービーメーカーで扱えるファイル形式を復習しておきましょう。まず、Windowsムービーメーカーの「ヘルプ」を見ると、読み込むことのできるビデオファイルの拡張子は次のとおりです。
.wmv、.wm、.asf、.avi、.m1v、.mp2、 .mp2v、.mpe、.mpeg、.mpg、.mpv2
先に学んだデジカメ動画でいえば、キャノン、カシオなどのデジカメの動画の拡張子は、.avi ですからそのまま読み込めます。一方、Panasonic、三洋電機、ニコンなどのデジカメの動画の拡張子は、.movですからWindowsムービーメーカーでは読み込めません。動画のファイル形式の変換が必要です。後に説明するDVDの拡張子で分かりますが、DVDの直接読み込みもできません。
次に、Windowsムービーメーカーで出力(書き出し)可能なファイル形式は、WMV形式、もしくはDVコーデックのAVI形式(DVテープへの書き出し)のみに限られています。DVDディスクへの書き出しはできません。すなわち、DVD-Video(DVDビデオ)作成の機能(
オーサリング機能)はありません。
<DVDのファイル形式とコーデック>
さて、DVDの記録方式には、DVD-Video(DVDビデオ)方式とDVD-VR方式があります。各方式を簡単にいえば、DVD-Video方式は市販のDVDビデオと同じ方式であり、その映像は編集することができません。一方、DVD-VR方式は映像を編集可能にした方式です。
この2つの方式のコーデックは両方式とも
MPEG-2 ですが、フォルダ構成やファイル名の規格は大きく異なります。また、フォルダ名やファイル名は固定です。
コーデック(CODEC)とは、符号器と復号器(
Coder/
Decoder)の省略形で、データを圧縮/再生するためのプログラム(ソフトウェア)です。圧縮のコーデックを単に「
エンコーダ」(encoder)、再生のコーデックを単に「
デコーダ」(decoder)と呼ぶ場合もあります。このコーデックの存在が、動画の扱いをわかりにくくしている一面もあります。
◇DVD-Video方式
下図にDVD-Video方式のファイル例を示します。DVD-Video方式のファイルは「
VIDEO_TS」フォルダに下に置かれ、「VIDEO_TS.BUP ~VTS_01_0.IFO」までは各種ビデオ情報、「VTS_01_0.VOB」はメニューの情報、「VTS_01_1.VOB」以降に実際のビデオファイルが保存されています。
DVD映像では、短い映像のひとかたまりを一般に「
クリップ」といいます。下図の例では4つのクリップが、「VTS_01_1.VOB~VTS_01_4.VOB」の4つのビデオファイルとして表示されています。その拡張子は、「
.VOB」と決められています。
◇DVD-VR方式
DVD-VR方式のファイル例を下図に示します。DVD-VR方式のファイルは「
DVD_RTAV」フォルダの下に置かれ、「VR_MANGR.BUP、VR_MANGR.IFO」は各種ビデオ情報、「VR_MOVIE.VRO」が実際のビデオファイルです。
DVD-VR方式では、クリップがいくらあってもファイルとしては1つになってしまいます。その拡張子は、「
.VRO」と決められています。
<動画ファイル形式の変換>
動画のファイル形式はデジタル技術の発展にともない、非常に多くのフォーマットが提案されており、かつコーデックが絡んでその扱いを難しくしています。そこで、動画の編集ソフトを扱うときに注意すべきことの一つに、読み込むことのできるファイル形式をいつも意識しなければならないことがあります。
一般に動画の編集ソフトを使うときは、前以てそのソフトの「ヘルプ」やメーカーのホームページなどで、入力出力可能なファイル形式を調べておくことが大切です。Windowsムービーメーカーは扱えるファイル形式にかなり制限がありますが、市販のDVD編集ソフトはDVDを含めて扱えるファイル形式は結構多様です。
ただ、必要に応じてファイル形式の変換を行ないます。巷には多くの有料無料の動画変換ソフトがあります。数ある
フリーの動画変換ソフトのうち、一般の動画ファイル変換ソフトのお奨めは「
Free Video Converter」です。また、DVD-Vieo(DVDビデオ)から、WMVファイルに直接変換する「
DVD2WMV」というソフトも便利です。動画の世界ではWMV形式はあまりメジャーではありませんが、 DVDビデオからWMVファイルを作成できる数少ないフリーソフトです。
DVD-VR形式のDVDを、Windowsムービーメーカーに読み込む場合はチョッと厄介です。まずDVD-Vieo(DVDビデオ)形式にして、上記の「DVD2WMV」を使います。市販のビデオ編集ソフトは簡単なオーサリング機能を持っており、DVD-Videoも作成できるようになっています。
DVD-VR形式などからDVD-Vieo(DVDビデオ)形式にすることを
オーサリングといいます。オーサリング専用の多彩な市販ソフトも巷に出回っていますので、これを利用してDVD-Videoを作成することもできます。オーサリング専用のフリーソフト(
DVD Flick など)もあります。
<XPのWindows Media Player は、DVDを再生できない>
WindowsXPパソコンでDVDを再生しようとしたら、「互換性のある DVDデコーダがインストールされていないため、Windows Media
Player はこのDVD を再生できません」などと、表示されてDVDが再生できないことがあります。ここでいう
DVDデコーダとは、再生コーデックのことです。
このようなメッセージが出てWindows Media Player で再生できないのは、WindowsXP には再生コーデックの
MPEG-2 を搭載していないためです。WindowsXP にPowerDVD(CyberLink社)やWinDVD(Corel社)などのDVD再生専用ソフトがインストールされておれば、そこに含まれるMPEG-2
コーデックを利用してWindows Media Player でも再生できます。
また、ネット上には無料のMPEG-2コーデック、例えば
GPL MPEG-2 Decoder などもありますので、これを利用してWindows Media Player で再生することもできます。このサイトの下の方、「インストール」項目の「インストールはとても簡単です。
ここから・・・」の「ここ」をクリックすると
本家のサイト に行き、ダウンロードできます。
ちなみに、Windows Vista には、MPEG-2コーデックがプレインストールされていますので、Windows Media Player はDVD を再生することができます。
<地デジ放送の録画は、DVD-VR方式に限られる>
テレビ放送の映像をDVDレコーダで録画したり再生するだけなら、DVDの2つの記録方式の意味を知っておくだけで十分です。それ以上の知識は必要ありません。ただ、パソコンにインストールしたビデオ編集ソフトで編集するには、上記に説明したような詳しい内容を知らなければなりません。
さて、地デジ放送を録画するには、DVDメディアのDVD-RAM,RW,R のすべてに共通してDVD-VR方式に限られます。 DVD-Video(DVDビデオ)の規格は、著作権保護のためのコピープロテクト「CPRM」技術に対応していないので、「
デジタル放送はVR方式でしか録画できない」ということになるからです。
地デジ放送はこのようにVR方式で録画しますが、編集可能というVR方式の本来の目的とは関係なく、著作権保護の観点からコピープロテクトがかかっており、実質的な編集やダビングはできません。いままでの説明は、ビデオカメラやデジカメ動画で撮影した映像、あるいはアナログ放送の録画映像のようにプロテクトのない映像の話です。