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Windows の解像度は 96DPI?

(2012年03月07日)

 年配の友人から高価なパソコン(ディスプレイ:1920×1080ドット)をせっかく買ったのに、以前より文字が小さくて困っている、というような苦情をよく聞きます。最近のパソコンの技術進歩はすばらしく、ディスプレイは高解像度、すなわちドットの形状が小さくなり全ドット数が多くなりました。その分、ディスプレイに表示できる情報量は増大しましたが、文字も画像も小さく表示されるようになりました。
 そもそも、文字が小さすぎるという問題が起こるのは、Windowsシステムが「ディスプレイの解像度は 96DPI である」(この意味は後に判ります)という前提で、OSのユーザーインタフェースが設計されているからです。最近のディスプレイの解像度は「100~140dpi」と大きくなり、小さな形状のドットになってきたので、当然文字も小さくなるという理屈です。ただ、この文字を大きくする仕掛けはあります。
 今回はWindowsシステムが文字の大きさをどのようにして決めているか、高解像度のディスプレイで文字を大きくする仕組みはどうか、こんなOS(Operating System:WindowsやMacなどの基本ソフトの総称)の基本にかかわる話をします。

<OSが想定する解像度>
 このIT情報シリーズでは、「解像度」という用語をいろんな場所で使っています。まず、解像度の定義を復習しておきましょう。詳しくは OSの解像度を見ていただきますが、ここでも簡単に触れることにします。解像度とは 1インチ(25.4mm)当たりのドット数をいい、単位は「dpi」(dot per inch)で表します。
 ところが巷では、何故かディスプレイのスペックだけは、1336×768ドット、1920×1080ドットといった、ディスプレイに表示できる最大のドット数を、解像度という習慣が定着しています。ややこしいので、IT情報シリーズでは これを「最大表示ドット数」と呼ぶことにします。

 さて、Appleが世界で初めてパソコンMac を開発 した頃は、ディスプレイの実解像度は 72dpi 程度でした。このディスプレイに表示する文字の大きさを決めるには、OSのプログラミングで解像度を特定の値に想定する必要があります。そうすると、ディスプレイに表示する文字の大きさは、ディスプレイのドット数で決まることになります。
 文字の大きさ(フォントサイズ)の単位は「pt」(ポイント:1point=1/72 inch)です。Mac OSではディスプレイの解像度を 72dpi と想定しました。すると 1pt=1/72インチですから、72pt=1インチ=72ドット、つまり 1pt=1ドット であるという利便性がありました。
 日本語の印刷文字の標準寸法は「10.5pt」ですから、Macでは10.5pt を10.5ドットとして、OSをプログラミングしました。紙に印刷した10.5pt と同じ大きさが、ディスプレイでも10.5pt ほどの大きさに表示されるようにしたのです。

 Mac にやや遅れて世に出たMicrosoft は、Windows のディスプレイの解像度を 96dpi と想定しました。1pt=1.33ドット(=96/72)に想定したといっても同じことです。Windows では10.5pt の文字なら、14.4ドット(=10.5×96/72)で表示することになります。
 こうしてOSが想定するディスプレイの解像度を、Macは 72DPIWindowsは 96DPI として現在に引き継いでいます。ここでいう解像度「DPI」値は、ディスプレイの性能を表す物理的な値ではなく、OSをプログラミングするための仮の値なので、その単位はこのように大文字で表わす習慣です。

 そしてパソコン用に開発される全てのアプリケーションは、このOSの値を基準にして作られます。この値はこれら全てのアプリケーションに影響を与えるので、MacやMicrosoft も簡単に変えるわけにはいきません。
 最近はディスプレイの解像度が大きくなったということは、1ドットの寸法が小さくなったわけですから、このままではディスプレイに表示する文字の大きさは当然小さくなります。

<Windows7の文字の大きさ設定「%」の意味>
 WindowsXPからは、高解像度で文字が小さい場合に、これを大きく設定する機能が搭載されています。Windows7でシステム(OSとアプリ)の文字の大きさを設定するのは、下図に示す「ディスプレイ」画面です。文字の大きさを、「小?100% (既定)」 「中(M)?125%」 「大(L)?150%」のように、「」で表示しています。ただ、下図からだけでは何を基準に、% 表示しているのかわかりません。

 

 Vistaの場合は文字の大きさを設定するのは、下図に示す「DPIスケール」画面です。

 

 上の2つの画面を見比べてください。XP~Vistaまでは 文字設定のスケールを「DPI」値で示してきましたが、Windows7から「%」表示になりました。Windows7の「%」と Vistaの「DPI」を対比すると、次のようになり「%」の意味がわかります。
  100%=96DPI、125%=120DPI、150%=144DPI
 このようにOSが想定する解像度の単位を「DPI」から「%」に変えたのは、私が思うに基準値の「96DPI」という見かけ中途半端な数値の意味を、Microsoftが一般向けに説明するのが難しいからでしょう。

 すでに述べたように、ディスプレイに表示する文字の大きさは、そのドット数で決めるようにしています。そしてOSが想定する解像度と、ディスプレイの実解像度をほぼ同じにすることが、OSのプログラミングの基本でした。こうすることで紙に印刷する文字の大きさと、ディスプレイに表示する大きさをほぼ同じにすることができます。
 さらに、お年寄りなどでは DPI 設定の機能をより積極的に利用して、紙に印刷する文字の大きさより、ディスプレイに表示する大きさを大きめに指定して、ディスプレイの文字をより見やすくしている人も多いようです。

<DPI設定の及ぼす影響>
 高解像度ディスプレイで小さくなった文字を大きな文字に変身させるのが、「DPI 設定」であることが判りました。DPI 値を変えるということは、「ディスプレイの解像度は 96DPI である」というWindows OSの基本の値を変更するということです。

 DPI 設定を変更する操作をしようとすると、「DPI 設定を変更すると一部の項目が画面に収まらなくなることがあります」という注意メッセージが現れます。元々OSを含むすべてのアプリケーションは、「ディスプレイの解像度は 96DPI である」という前提でプログラミングされていますから、そんなことになる可能性はあります。
 もう一つ、気になることがあります。高解像度のディスプレイの DPI 設定で文字を大きく設定すると、肉質の細い(太字の逆)ひ弱な書体になってしまうのはやむをえません。これを見やすくするには、Internet Explorer のデフォルトフォント「MS Pゴシック」を、Vistaから採用された「メイリオ」フォントに変更するのも一法です。

 さて、DPI 設定の歴史的な変遷も知っておく必要があります。DPI 設定の機能はXP時代から搭載されてきました。XPの時代の DPI 設定は文字のみを大きくする機能で、写真や図表などの画像は変化しませんでした。ところが、WindowsVista以降は DPI 設定の対象が大きく変わり、文字と画像が共に同じ比率で変わるようになったことです。

<DPI設定の実際例>
 ディスプレイの 解像度を大きくすると、画面の文字は小さくなるような気がする? まだ、こんな疑問を持つ人がいるかもしれません。
 実は「ディスプレイの 解像度を大きくすると・・・」という表現が曖昧なのです。「2つのディスプレイを比較するとき、 解像度 dpi の大きい方が文字は小さく見える」「1つのディスプレイを扱うとき、 その DPI 値を大きく設定すると文字は大きくなる」と言えば、今までの説明がスッキリ理解できるでしょうか。

 さて、私は下記のような 3つのパソコンを持っています。
  WindowsXP(4:3)ノート15型 : 1024×768ドット(約80万ドット) → 85dpi
  Windows7(16:9)ノート15.6型: 1366×768ドット(約100万ドット)→ 100dpi
  Windows8(16:9)デスクトップ21.5型:1920×1080ドット(約200万)→ 101dpi
 上記 3つのパソコンのディスプレイの実解像度 dpi と、それぞれのパソコンごとの DPI の設定例の態様をみていくことにします。 Windowsが想定するディスプレイの解像度は、幾度となく言っているように 96DPI と決められています。

 上記のWindowsXPパソコンの解像度は 85dpi ですから、そのドット間隔は想定の 1.13倍(=96/85)となり、想定より文字サイズは1.13倍大きくなっています。このWindowsXPの DPI 設定は、デフォルトのままの100%にしおくのが自然でしょう。
 Windows7パソコンの解像度は 100dpi で、Windowsの想定 96DPI とほぼ同じですから、私はデフォルトのまま使っています。ただ、Windows8パソコンの解像度は 101dpi で、Windows7のそれとほぼ同じですが、ディスプレイ寸法が大きいだけに文字は小さく見えます。そこでWindows8では、DPI 値を125%(120DPI)にしていますが、目に気持ちよく使っています。

 この DPI 値を変えるということは、OSの基本設計に関わることで 96DPI では10.5pt の文字は、すでに述べたように 14.4ドット(=10.5×96/72)で表示されていました。これを 120DPI にすると、10.5pt の文字を17.5ドット(=10.5×120/72)で表示することになり、文字は大きく表示されることになります。
 この120DPI ということは、1pt=1.66ドット(=120/72)に想定したといっても同じことです。ちなみに、96DPI のときは 1pt=1.33ドット(=96/72)であることもすでに述べたとおりです。



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