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デジタル放送とハイビジョンの仕組み

(2009年11月06日)

 現行の地上アナログテレビ放送は、2011年7月24日をもって終了します。以降、地上デジタル放送に完全に移行しますが、我が家にはデジタルテレビは台所の小型液晶テレビしかなく、居間には29型ブラウン管式のアナログテレビが居座ったままです。
 近いうちに大型ハイビジョンテレビを購入したいと思っていますが、その前にデジタル放送やハイビジョンなどのことを少し勉強しようと始めたところです。その内容を順次書き連ねることにします。アンテナのこと、チャンネルのこと、チューナーのこと、ハイビジョンのこと、BS/CSのこと、ブルーレイのこと ・・・など知りたいことは山ほどあります。
 アナログの華であったテレビも、完全にデジタルの時代に突入しています。「ボクにもわかる地上デジタル」から多くのことを学びました。記して謝意を表します。デジタルのすごさを、改めて感じています。
 さて、テレビの初回の話は「デジタル放送とハイビジョンの仕組み」についてです。

<世界の地上デジタル放送方式>
 デジタル放送における今年のトピックスは、地上デジタル放送の日本方式(ISDB-T)が、ペルー・アルゼンチン・チリで採用されることが決まったことでしょう。実は2006年6月に、ブラジルの地上デジタル放送に日本のISDB-Tをベースにした方式(日本・ブラジル方式)を採用することが既に決まっています。
 南米地域で採用されている日本方式とは、この日本・ブラジル方式のことを指します。総務省では、今後もベネズエラ、エクアドル、ボリビアなど南米諸国における採用を目指しています。日本のISDB-T方式は国際標準の1つとはいえ、これまで日本しか採用していなかったが、これで複数の国で利用される方式に位置付けられることになりました。

 日本のISDB-T方式は、他の方式に比べて電波障害や干渉に強く、車内や山間部においても良好に受信ができることなどが評価されています。加えて、ハイビジョン放送とワンセグ放送が1つの送信機で伝送でき、全体のコストが安くなるといった長所を持っています。

 ちなみに、世界の地上デジタル放送方式 は、次のように4つの方式が採用されています。
 ・ヨーロッパ方式(DVB-T):ヨーロッパ・アフリカ・中近東・東南アジア・オーストラリア
 ・アメリカ方式(ATSC):北米・韓国
 ・日本方式(ISDB-T):日本・南米
 ・中国方式(DMB-T/H):中国

 

<ハイビジョン放送>
 日本のテレビ放送では、電波法施行規則において次のものを「高精細度テレビジョン放送」と規定しています。
  ?走査方式が一本おきであって、ひとつの映像の走査線数が1125本以上のもの
  ?走査方式が順次であって、ひとつの映像の走査線数が750本以上のもの

 高精細テレビの一般名称は、海外ではHDTV(High Definition television)と呼ぶのが通常で、HDTVを略して単にHDともいいます。日本ではNHKが開発したハイビジョン(Hi-Vision)の名称がHDTVの愛称として親しまれています。その画質をハイビジョン画質(またはHD画質)と呼びます。
 また、高精細テレビ以外のテレビ放送を「標準テレビジョン放送」(SDTV:Standard Definition television)と規定しており、SDTVは略して単にSDともいいます。SDTVは従来のアナログ放送やそれと同画質のデジタル放送を含み、走査線数は525本です。SDTVの画質を標準画質(またはSD画質)と呼びます。
 日本のハイビジョン放送は地上デジタル(ISDB-T)と、衛星デジタル(ISDB-S)の2種類の放送が行なわれていますが、共に走査方式は一本おきで走査線数が1125本のものです。ちなみに、走査方式が順次で走査線数が750本の放送は、海外では採用されていますが日本では現時点で実施されていません。

 日本のハイビジョン放送の始まりは、2000年12月1日のBSデジタル放送、2003年12月1日の地上デジタル放送の開始からです。ただ、デジタル放送がすべてハイビジョン放送であるわけではありません。当たり前ですが、ハイビジョン放送のシステムで、ハイビジョン画質の映像を送り、ハイビジョンテレビの前に座って、初めて本来のハイビジョン映像を見ることができます。
 放送局には撮りためた多くの標準画質の映像があり、これらもハイビジョン放送のシステムを使って送られてきます。ただ、ソース映像が標準画質であっても、アップコンバート技術(後述)で画質感はかなり向上しています。

 ハイビジョン放送の最大の特徴は、従来の方式に比べて走査線数が大幅に増加したことです。大型の薄型テレビの普及と相俟って、きめ細かなきれいな映像を楽しむことができるようになりました。
 この走査線には、映像信号が含まれている大部分の走査線と、映像信号が含まれていない走査線があります。映像信号が含まれている走査線を有効走査線といい、映像信号が含まれていない走査線には画角(画面のアスペクト比)の識別信号などを載せています。
 受信側のテレビ画面でいえば、映像信号が含まれている走査線はディスプレイに表示される走査線であり、映像信号が含まれていない走査線はディスプレイに表示されない走査線といっても同じことです。

 単に走査線というとき、多くの場合この有効走査線のことを指します。デジタルハイビジョンでは、1125本の走査線のうち有効走査線数は1080本です。走査方式が順次で走査線数が750本の放送は、有効走査線数は720本になっています。
 一方、地上アナログ放送などSDTVでは、525本ある走査線のうち有効走査線数は480本です。これらの数字は今後の説明にも出てくる大事な数字ですから、記憶にとどめておいてください。

<走査方式と画素数>
 前項の電波法施行規則に、「走査方式が一本おきで・・・」「走査方式が順次で・・・」という用語がありました。走査とは送信側では映像を時系列で多くの点に分解し電気信号に変換することです。逆に受信側では電気信号を時系列で映像に組み立てることをいいます。この信号処理を走査(scan)といい、その軌跡を走査線といいます。

 テレビの技術を少しでも学ぼうとすると、その基本技術であるこの「走査」についての理解を避けて前に進むことはできません。直感が働きやすいように、多くの皆さんが毎日見ているテレビ受信機のディスプレイの表示を例 に、走査方式や走査線についてもう少し詳しく説明します。
 テレビのディスプレイ画面は、画素という小さい単位素子が集まってできています。この画素を左から右へ上から下に、順次光らせることでディスプレイに映像を映し出します。このように画素を順次光らせていくことを走査といい、走査によって描かれた画素の横 1行分の軌跡を走査線といいます。

 下図のテレビのディスプレイを例に、走査方式 について具体的に説明します。
 走査方式には2種類があり、一本おきの走査を「インターレース」(Interlace scan)、順次の走査を「プログレッシブ」(Progressive scan)といいます。また、1枚の映像画面をフレームといい、1秒間のフレーム表示回数を「フレームレート」(単位はfps:frame per second)といいます。
 2種類の走査方式では、1秒間に表示する映像画面の枚数、すなわちフレームレートが異なります。インターレース方式は奇数段目と偶数段目の2回の走査で1回の画面表示を行い、そのフレームレートは30 fps(正確には29.97 fps)です。これに対して、プログレッシブ方式は1回の走査で1回の画面表示を行い、そのフレームレートは60 fps(正確には59.94 fps)です。

 

 日本のデジタル放送では、地上デジタル放送が1440×1080(=155万)画素、BSデジタル放送なら1920×1080(=207万)画素の映像で、走査線数は共に 1080本と決められています。これらの映像の送出にはインターレース方式が採用され、それぞれ1440×1080i、1920×1080i のように表示します。i はインターレース方式を示しています。
 プラズマや液晶ディスプレイなど固定画素のディスプレイの場合は、垂直方向の画素数と走査線数は一致 します。例えば、画素数 1920×1080(垂直画素数1080) のハイビジョンテレビは走査線数 1080本で走査し、送信されてくるハイビジョン放送の走査線数 1080本と一致するようにしています。

 下図にデジタル放送と従来のSDTVとの画素数の比較 をしてみました。下図のそれぞれの面積は、それぞれの情報量を示しています。図で示すように、地上デジタル放送の画素数は1440×1080で、BSデジタル放送の1920×1080より少ない画素数(情報量)で送られてきます。
 それは地上デジタル放送では、与えられた6MHzの帯域幅に余裕が少ないため、映像のビットレート(次々項参照)を高くできない事情があるからです。BSデジタル放送では、地上デジタル放送に比べて1チャンネル当たりの帯域幅が大きいため、フルスペック(1920×1080)のハイビジョン放送の送出が可能です。

 

 ちなみに、日本のデジタル放送のアスペクト比(横縦比)は、人間の視野角に近い 16 9 と決められています。ところが上図を見ると、BSデジタル放送の1920×1080 は16:9 ですが、地上デジタル放送の1440×1080 は 16:9 ではなく 4:3 になっています。
 実は、画素数1920×1080 は横×縦が正方形の画素であり、画素数1440×1080 は元々が横長の長方形画素なのです。ディスプレイに表示する際に 16:9 になるように左右に引き伸ばすわけではありません。

 さて、アメリカやヨーロッパのデジタル放送では、1920×1080i と混在しながら、1280×720p がHDTVとして放映されています。p はプログレッシブ方式を示しています。
 1080i と720p とは、1080i の方が画素数で約2倍になりますが、1080i はフレーム周波数が30 fpsで、720p の60 fpsの半分であるため、鮮明さは同程度であるといわれています。

<地上デジタルは 1440×1080 なのに 16:9?>
 前項で、地上デジタル放送の個々の画素は、横長の長方形画素でできていると説明しました。画素は正方形であると思い込むと、地上デジタル放送の 1440×1080 (単純数値比で4:3)が、ワイドテレビ(16:9)で画面いっぱいに違和感なく表示されることの説明がつかなくなってしまいます。

 ところが、うまい仕組みになっています。地上デジタル放送では映像情報の他に、次のような制御信号が送られてきています。テレビ側ではこの制御信号をもとに表示画面を構成します。
 ・画角(画面のアスペクト比)=横16:縦9
 ・解像度(横縦の画素数 )=横1440:縦1080
 ・画素のアスペクト比  =横1:縦0.75
 16:9 のワイドテレビでは上記のような制御信号を受けて、画素を元の長方形画素にして画面の横いっぱいに表示します。さらに、画素数 1920×1080のテレビで表示する場合は、画素数も1440→1920に変換します。

 画素の形状が正方形でない、もう1つの例があります。DVDレコーダでDVDの映像を 4:3のテレビ(実際には16:9のデジタルテレビで見ることになります)で見る場合です。DVDの画素数720×480(単純数値比3:2)は、4:3ではありません。
 ここでも、画角などの制御信号がDVDレコーダの映像端子を通じてテレビに送られます。DVDの画素は少し縦長の「横0.9:縦1」なので、実際の寸法は648:480 になり、ほぼ従来の4:3の横縦比で見ることになります。

<画質と ビットレート>
 デジタル放送の画質を決める最大の要因は、放送局から送られてくるデータの情報量です。この情報量の大きさを ビットレートで表示し、その単位にはMbps(Mega bit per second)を使います。デジタル放送で送信されるデータのビットレートは、具体的にはおよそ次のようになっています。

 ・地上デジタル放送(1440×1080i): HD放送 約17Mbps  SD放送 約8Mbps
 ・BSデジタル放送(1920×1080i): HD放送 約24Mbps  SD放送 約12Mbps
 ちなみに、録画メディアと比較すると、ブルーレイで24Mbps超、DVDで8Mbps、S-VHSで5Mbps、VHSで2.5Mbps程度です。

 一方、放送局で扱うBSデジタル1920×1080i の生(なま:非圧縮)のデータのビットレートは、約1500Mbps もあります。これをそのまま電波に乗せて送ることは到底不可能ですから、上記のような値にまで圧縮(エンコード)して送信します。圧縮されて送られてきた信号は、テレビ受信機のチューナーでこれを伸張(復元:デコード)して眼に見える映像に再現します。
 ちなみに、エンコードやデコードをするプログラムを コーデック といいますが、日本のデジタル放送の圧縮のコーデックは一般に 「MPEG2」 を使います。CSハイビジョンのスカパー! では、コーデックとして圧縮率の高い 「H.264」 を利用しているようです。

<ハイビジョンテレビ>
 ここまで、主として映像を送信する側からの話をしてきました。送信側の映像だけが高画質でも仕方がありません。これを受信するテレビ受信機でも多くの情報を表示できなければ、きれいな映像として見ることはできません。
 JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)の定義では、プラズマや液晶ディスプレイなど固定画素の受信機では、垂直画素数が650以上のものをハイビジョンテレビと呼んでいます。
 また、日本の放送局から送信される映像データは、何回も述べているように1440×1080i または1920×1080i のインターレース映像です。

 プラズマの雄 Panasonicと、液晶の雄 Sharp のテレビ受信機の画素数と走査方式を、それぞれのカタログ(共に2009.9版)から実際に調べてみました。
 ・Panasonic:(プラズマ) 1920×1080、1024×768、1024×720 の3種類
 ・Sharp: (液晶) 1920×1080、1366×768 の2種類
 両社とも走査方式は、すべての機種でプログレッシブです。また、およそ40型以上は全ての機種で、フルスペックの画素数1920×1080 を持ち、「フルハイビジョン」と呼称しています。およそ37型以下の機種は上記のように画素数も若干少なく、単に「ハイビジョン」と呼称しています。

 カタログの内容をもう少し詳しく見ていきましょう。まず、走査方式ですが、プラズマと液晶のすべての機種でプログレッシブです。送信されてきたインターレースですが、テレビ画面ではそのまま表示するようにはなっていません。
 アナログ放送のブラウン管テレビでは、インターレースで送られてきた信号をそのままインターレースで表示していましたが、プラズマや液晶テレビなどの固定画素のディスプレイでは、プログレッシブで表示します。固定画素のディスプレイでは、インターレースよりプログレッシブの方が「ちらつき」の少ない表示にできるからです。
 そこでプラズマや液晶テレビでは、30fpsフレームのインターレース信号から、60fpsフレームのプログレッシブ信号へ I/P変換(インターレースからプログレッシブへ変換) してからディスプレイに表示するようにします。フレームレートは2倍になり、デジタル補間処理で情報量を増加させて解像度を上げる効果もあります。

 次に、画素数についてですが、高画素数のハイビジョンテレビしか販売していません。このプラズマや液晶テレビは、上記カタログにあるように機種により固有の画素数を持っています。ところが送信されてくる映像の画素数は、地上デジタルの1440×1080と、BSデジタルの1920×1080 の2種類だけです。
 映像を受信するテレビ側では、受信した映像の画素数を、個々のテレビが持つ画素数に一致するように変換(デコード)しなければなりません。実際には I/P変換も含めて、受信した信号のすべてをデコード(フルデコード)します。この処理にかなりの時間を要し、画面表示に遅れが生じることにもなります。

 このような事情から、改めてハイビジョンテレビの定義を確認することにします。「ハイビジョン放送の 1920×1080i をフルデコードするデジタルチューナーを搭載し、かつディスプレイ表示において垂直画素数が 650以上のもの」をハイビジョンテレビと呼称するということです。
 チューナーがデジタルチューナーであっても、表示において垂直画素数が650に満たない場合は、単なる「デジタルテレビ」ということになります。アナログテレビに外付けのデジタルチューナ(ハイビジョンに対応していない簡易型デジタルチューナーでもよい)を設置した場合は、ディスプレイはアナログですが実質的にはデジタルテレビといえるでしょう。デジタルチューナーを持つDVDレコーダをアナログテレビにつないでも、実質的なデジタルテレビにすることができます。

 さて、近頃ではパソコン用も出回るようになった外付けのデジタルチューナですが、その中身はチューナというより主にデコーダ(デコードするための装置)でできています。そこで、外付けのデジタルチューナはデコーダ内蔵チューナあるいは単にデコーダ、またはセットトップボックス(STB)などと呼ばれることもあります。
 ちなみに、セットトップボックス(STB:Set Top Box)とは、ケーブルテレビ放送などで一般のテレビで視聴可能な信号に変換するデコーダのことで、テレビ受信機の上に置いて使うことからこの名があります。

<映像のアップコンバート>
 前項で述べたように現在のハイビジョンテレビは、画素数1920×1080(207万画素)のフルハイビジョンが大多数を占め、きれいなハイビジョン放送を享受できています。ところが、標準画質のDVD映像をそのまま大型のハイビジョンテレビで見るとすると、DVDの画素数は720×480(35万画素)ですから、35万画素を207万画素まで単に引き伸ばす(単に画素数を増やす)ことになり、泣きたくなるほどぼけた画像になってしまうはずです。

 これでは困ります。そこで、通常はアップコンバート(アップスケーリング)という画素数を補完する処理を行ないます。ただ、アップコンバートは画素数は増やしますが、ソース映像の再現や復元はできません。あくまで擬似補完による人間の眼の錯覚を利用して、画質感の向上を図ろうとするものです。このようにアップコンバートは本来のハイビジョン画質と異なりますが、画質感はかなり向上します。
 この画質向上の技術には未だ改善の余地や可能性があるようで、各社はその技術開発を競っています。東芝・NEC・三菱電機などは、この技術をアップコンバートを超える「超解像」と称して、商品PR をしています。

 さて、アップコンバートの具体例をみて行きます。
 まず、映像を送出するときです。放送局には何年にも亘って撮りためたアナログ映像(640×480)や、DVD(720×480)が沢山あります。こんな標準画質(SD)の映像を送出する場合、地上デジタル放送では画素数を 1440×1080 に、BSデジタル放送では 1920×1080 にアップコンバートします。送ってきた映像をハイビジョンテレビで見ても、ハイビジョン画質(HD)にはなり得ません。実質的な画質は、SDのままです。

 一方、地上デジタルのハイビジョン放送や BSハイビジョン放送では、ハイビジョンカメラで撮った映像をそのまま送ってくるわけです。当然、HDの画質で見ることができます。テレビで見る側では、ソース映像がHDか SDかの違いがそのまま画面に出ます。画素数が 1440×1080 や 1920×1080 で送られてきたら、画質はHDであるというわけではありません。
 逆に、ダウンコンバート(これは容易です)を行なうこともあります。近頃の撮影はハイビジョンで行なうことが多く、このハイビジョン映像をアナログのSD映像に変換する場合です。地上デジタルと地上アナログのサイマル放送をする際には、必ずこの変換が必要になります。

 次に、映像を受信する側の対応です。プラズマや液晶などの固定画素テレビでは、そのディスプレイの持つ画素数でしか表示できません。Panasonic と Sharp のテレビでは、次の4つの画素数を持つ機種しかありません。
  1920×1080、1366×768、1024×768、1024×720
 テレビ側では、送ってきた画素数(すべてのビット)をバラバラにして、テレビの持つ画素数に変換します。すでに述べたように、すべての入力映像信号を I/P変換も含めてフルデコードして、ディスプレイの持つ画素数に補完しています。画素数の変換は、若干のアップもあればダウンもあります。

<DVD をハイビジョンテレビで見る>
 DVDレコーダもアップコンバート機能を搭載するものが増え、特にハイビジョン放送に対応したDVD/BDレコーダでは当たり前になっています。HDMI 端子を持った機種がそれです。ここで、DVD/BDレコーダとフルハイビジョンテレビ(1920×1080とします)を接続して、DVD(720×480とします)の映像を見る場合の双方の働きを考えてみます。

 まず、アップコンバート機能のない古いDVDレコーダを接続したときです。この場合の動作を、我が家のDVDレコーダ(Panasonic DMR-E100H 2003年秋商品)の例で説明します。DMR-E100Hの映像出力端子は、黄白赤の映像音声コード(黄:コンポジット端子)、S端子、D1/D2端子(D3以上はなし)の3つがありますが、いずれもアナログ端子です。
 この場合、DVDレコーダはDVDのデジタル信号をアナログにして出力し、テレビではこれを受けて再度デジタル信号に戻してアップコンバートしますが、画質はSD画質のままです。

 一方、アップコンバート機能を搭載したDVDレコーダの場合は、テレビとHDMI端子で接続するだけで、DVDレコーダ側でアップコンバートしたデータを送出します。ただ、テレビ側でもDVDの直接入力があれば自動的にアップコンバートするので、DVDレコーダでのアップコンバートは必須ではありません。
 DVDレコーダとハイビジョンテレビをHDMI端子で接続すれば、どこかで自動的にアップコンバートが行なわれます。このアップコンバートを DVDレコーダでするかテレビでするかの違いは、双方の性能差によるので一概にどちらがよいかはいえません。
 ただ、HDMI端子はデジタルのHD画質をサポートしていますが、ソース映像が元々SD画質のDVD(720×480)であれば、アップコンバートによる画質感の向上はさほど期待できません。HDMI接続が本領を発揮するのは、ハイビジョン録画されたDVDやBD(Blu-ray Disk)を見るときです。

<デジタル映像は遅れて表示される>
 総務省の地上デジタル放送の免許方針では、「アナログ放送と同一の番組のデジタル放送が、1日の放送時間中の3分の2以上であること」と決められています。このアナログとデジタルのサイマル放送(同時放送:simulcast)は、2011年7月24日まで続きます。
 デジタル放送とアナログ放送を2台のテレビで見ていると、デジタル放送がアナログ放送よりかなり遅れて表示されることがわかります。このデジタル放送の時間遅れは、数10年余りに亘り親しまれてきたNHKの時計形式の時報の姿も消すことになりました。

 従来のアナログ放送では、送る側の信号がそのままストレートにテレビ受信機に届き、画面表示に実質的な時間遅れは生じません。デジタル放送における時間遅れの要因は明快です。
 地上デジタル放送では、まず東京本局で映像のデジタル信号への変換と圧縮(エンコード)をして送出します。これを受ける地方局では、この映像の伸張と圧縮(デコードとエンコード)をして家庭に送出します。中継局の数にもよりますが、この放送局でのエンコードやデコード処理に約1秒ほどの時間がかかります。
 次に、受信側のテレビでは圧縮された映像の伸張、 I/P変換、アップコンバートなど(デコード)をする必要があります。これらの信号処理に時間を要することは既に述べました。このデコード処理に約1秒ほどの時間がかかります。
 結局、トータル2秒程度の遅れを生じてしまいます。膨大な情報をデジタル処理しなければならないとはいえ、エンコードやデコードに要する処理時間の長さには驚きです。
 
 また、NHKのテレビ放送も、東京本局や各府県の放送局などでエンコードとデコードを行っており、しかも地域によって送出経路が異なるため、遅れる時間が違ってきます。受信側のテレビのデコード処理も、メーカーや機種によって若干の差があります。そのため、東京から全国一斉の時報が出せなくなりました。
 ただ、生放送の番組以外では、放送局側で途中処理の遅れ分を考慮して、あらかじめ先送りすることも可能ですので、常に実時間との時間差を生じるとは限りません。2011年のアナログ放送の停波以降は、時間遅れの処理にさらに考慮が払われるものと思います。



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